読書録『愛、執着、人が死ぬ』

みなさんは、あなたが死んでくれたら、と願うほど人を愛したことがありますか?

とある作品を語る上でこの問いはとても印象深いものとなるでしょう。

どうもこんにちは、或いはこんばんは。桑山蛍袋です。

そんなわけで今回は『愛、執着、人が死ぬ』という作品について語ろうと思います。

はじめに、この作品はMIYAMUさんという方によって書かれた文学作品です。

私がこの本を手に取ったきっかけは書店での出会い、ただそれだけです。

私自身、本を買うときは好きな作家さんであったり、おすすめされた本が多いのですがこの本に関しては何か惹かれるものがあったから衝動買いしました。

ロマンチックに言うなれば、運命を感じたとでも言うべきでしょう。この作品にはただならぬ気配がする、と私の本に対する嗅覚が反応したのです。

まず、この本は題名にもある通り、愛と執着が一番の肝となっています。主要人物は『アタロー』、『夏夜』、『先生』、『椎子』の四人です。この四人はそれぞれ育った環境、出来事が特殊というか、不幸と言うべきか。この物語の観測者である読み手の私達が言うのも違うかもしれませんが、幸福な人生をおくっているわけではなさそうです。

それぞれ誰かが人の認知や行動に影響を与えている、そんな作品です。

この作品には本当の愛なんてないのかもしれません。

精神的に縛られることを受け入れている人もいれば、愛と執着の混ざった人、自分自身の恋愛感情から一度逃げたもののそれが運命かのように囚われた人、そして全てをかき乱す所謂魔性の女。

それぞれが迎える結末だけでなくその過程も楽しむことができる作品です。

この作品は何と言っても、会話文がとても自然です。実際にあるようなありふれた会話。文学作品は会話に何かしらの伏線を込めてしまいがちだと思うのですが、この作品の会話文の自然さは異質でした。喋らせたい言葉を喋らせるのではなく、その人物が喋りたいように喋らせている、そう感じました。

ありふれた日常に纏わりつく執着と愛情、人間の歪さが生み出す美しい作品をどうか手にとって読んでみてください。

「愛してほしい」よりも「嫌われたくない」という思い。

それぞれの思いが交差し、そして人が死んだ。

まさにそれは人の歪な感情と死を持った儚さそのものでしょう。